生うふ帳

ナツコさんの欲しいもの

抱きつける首

くんなりと両腕をまわして耳の下に顔をもぐりこませる

聞き取れない睦言と甘噛み

指で髪の毛を梳いて

はんぶん閉じた眼でみつめる顔

両の頬をはさんで固定してくれる手

だらりと力のぬけたからだを

走り抜ける稲光のような感覚

密着しお互いが欲していたと告げあう肌

欲しいものを欲しいと自覚できたなら

自分がそのものになるのも良い

抱かれたいのならいらっしゃい

そこの列にならんでください

もらうより渡すほうが気持ちいい

いつも叶えられない願いがあるのが好い

満たされない状態は贅沢で

常に焦がれることのできる胸はだからこそ高まる

片恋が好きです

永遠に成就しない恋が好きです

今日も明日も

わたしの肌は求めて求めて

あえかに息を吐く

その空しさこそが欲しいのかもしれないのです