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少し前のことになりますが・・・


ある男のかたとお会いしたのです。


お仕事がらみだったので、子どももいませんでした(基本はいつも子連れです)。




わたし、荒木経惟さんの作品が好きなのです。


絶版になった・あるいは入手困難な写真集を持っているからあげるよ、


ナツコちゃん好きだったよね?


と、ずいぶん年上のそのひとに誘われて、


何の考えもなく迎えにきてくださった車にのりこみました。





「あまり時間がないんだよね?」と言いながら、


そのひとはあっというまにホテルの駐車場へ


車をすべりこませました。



ええー?


ら、らぶほてる?


じゃあ、写真集は口実?


わたしはこんないやらしブログを書いているわりに、うぶなのです。


ちっとも気づきませんでした。




「困りますから、引き返してください」


「もっと困らせてあげるから、さあ、いこう」


「あの、盛り上げるために言ってるわけじゃあないんです。


 こんなところ、困るんです、戻ってください」


「・・・ナツコちゃん、ぼくね、君に会いにわざわざ来たんだよ」



男のひとは、わたしの太ももに手をおきます。


「ずっとずっと、ナツコちゃんのこと、考えながら、ここまで来たんだよ」


わたしの耳元まで、唇をよせて、小さな声でささやかれながら、


男のひとの手は太ももをゆっくり動いている。



どうてもいいひとでも、


こんなふうにされると、あの、正直なところ、


ちょっと気持ちよくなってしまいます。


でも、もっとしてほしくはない。



「ほんとにやめてください。


**さんも、不愉快な思いするだけですから・・・」


からだを離して、太ももの手をどけました。



あ。


気づいたら、男のひとは、あの顔をしています。


あの顔・・・


「この女、おかしてやる」


という、目のすわった、強い強い欲望でふちどられた顔。



このひと、ほんきだ。



車のドアを開けて降りようとすると、


すばやく腕をつかまれ、抱きすくめられました。



「ナツコちゃん。


 こうやって抱きしめたかったんだ。


 いつもいつも、ナツコちゃんとエッチすることを考えていたんだよ。


 我慢できない・・・・」



はぁはぁ言う男の人の息をかんじながら、


(エッチする、だって。そこは抱く、とかセックスする、とかがいいなぁ)と考えているわたし。


言い換えてもらっても、なにもしたくはありませんけれど。


男のひとはよほど興奮したようで、


わたしの手をおおきくなったところへ導きます。


「いやっ」


抗おうとするわたしの上におおいかぶさってくる男のひとは、


左手はわたしの手をつかみ、さわらせています。


そして、ブラウスのボタンをはずそうとする右手。


うまくボタンが外れず、スカートからブラウスをひきあげられて、


わたしは反対の手もつかまれました。


胸に顔をうずめて、舌でブラジャーのなかをさぐって・・・、


男のひとの左手で、わたしの手は激しく動かされています。


どんなに力をいれて振り払おうとしても、


「あの顔」でみつめられ、


両手をつかまれ、頭のうえにあげられました。


そしてそのまま、男のひとはわたしの身体のうえにのしかかって、動き始めて・・・、














36さいの、こどももいる、いいかげんいい歳のわたしは、


そこで泣き始めてしまいました。



「いやです。


 車にのったりして、ごめんなさい。


 本もいりません。


 わたし、いやなんです。ごめんなさい」



いやー、いやーと大きな声で泣き続けるわたしを見て、男のひとは黙ってしまいました。


きっとあきれたのでしょう。


気持ちがさめたのかもしれません。



しばらく、なんともいえない時間がたって、


男のひとは


「どこに送ればいいの」


と聞いてくれました。




近くの駅まで戻ってもらい、別れました。


写真集は無理やりもたされました。



「ひどいこと、しちゃったみたいだね。


 でも、また連絡するから・・・・」



そう言って男のひとはいなくなりました。




そのあと。


「あのとき抵抗していたナツコちゃんのこと思い出しては


 ひとりでしているよ」


というメールが、たまにきます。



押し倒されたのはほんとうにこわかったのに、


そうやって想ってもらうのは、嬉しい。


やっぱり、わたしは、おかしいのかな。



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