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3月3日


人妻ナツコの、ろすとばあじん物語-CA3H02340001.jpg


ママへ


お誕生日おめでとう。


今日で何歳?66?もう死んでから6年もたつ?


べったべたにバラとワインです。


血みたいな、錆錆の赤ワインだよ。


おもちはお友達に頂いた手作り。



今年ねえ、桃との菜の花、買えなかった。間に合わなかったの。


ちらし寿司も用意したのに、


天照ったら、マックがいいって道路につっぷして泣くんだもん。


仕方ないから、今日だけはお姫様のいうこと聞いてあげた。


マック食べるとお腹壊すんだもん、全員。





ほんとうの誕生日、8月なんにちなんだろうね。


もう誰も覚えてない。


おばあちゃん死んだら、色んな事が消えていくね。


あのひとも91だから、そんな、20年も30年もは生きないでしょ。


ねえ、あんなに強欲で愚痴と不平とだけで生きてたのに、


今じゃなんだか可愛いおばあさんになっちゃったよ。


今度会いにいくの。


ほら、実家のこととかね。色々相談しないといけないし・・・・


お誕生日もあるしね。なにあげようかな。


いつ聞いても、なんにもいらないって言うの。




ずーっとおばあちゃんのこと悪者にしてきたけど・・・


そうじゃない時も、あったんだなって思う。


病気の家族のもとでケアする辛さ、わたしも少しわかったから。



ねえ、まだ病気のこと気にしてる?


もうどうでもいいでしょ?


まだ気にしてるの?



そうだね。


病気じゃなければ、よかったよね。


わたしもそう思うよ。




でもさあ、


メカケの子で、ネグレクトされて、性的虐待うけて、貧乏で、


いつだって信じて裏切られて・・・・


それで病気になんないほうがおかしいよ。



うん。


でもね、ママがいろいろ怖がってたのも、それも、わかった。


あのねえ、おしょんさんね、アル中なの。


それで病院通ってるの、わたしだけ。


たまに薬もでるよ。


それね、噂されてね、


すごいんだね、ああいうのって。


だーーーーれもクチ聞いてくれないんだもん。


びっくりしたよ。



でもさあ、3年たってね、噂を流したひとが居づらい状況になってる。


わたし、なんにも悪くないもん。


いまだにあいさつもしない人もいるけど、どうでもいいの。


嫌いでも好きでもない。


そういう人に限って、わたしに用事あるときはすり寄ってくるし。



でも、ママはつらかっただろうなって。


わたしは女だけの中にいるけど・・・・


男がわんさか、寄ってきたもんねえ。


あの玄関先で腰をまわした親父が忘れられないよーーーー!!


コントだよね、あれ。ぐいんぐいんしてたね。


それでまたママが悪者にされてさあ。



夜中に毛布にくるまれて、飲み屋につれていかれたけど・・・・


あの気持ちもわかるようになった。


別れた男を思い続けて、手紙書き散らして、子どものことも忘れて


ひとりで性にふける気持ちもわかるよ。


わかるようになった。


男とわかれて、どんなにみじめだったかも。




ねえ、


死んだら依存ってなくなるの?


もうパパのこと考えない?


・・・・考えてるでしょ。ふふふ。



わたしねえ、もうどうでもよくなっちゃった。


ほんとだよ。強がりじゃないの。うん。



だってママがじゅうぶん見せてくれたもん。


自分の価値を認めないで依存していく恐ろしさ。


死んだほうがいいって言われる人生。





あとね、わかったこと、まだあるの。

わたしがいくらママを責めても、

なんにも言わないで黙ってたのか・・・

すこしだけ、わかる。

わたしにはまだできないけど。

いつかわかってくれたらそれでいいって、

黙って黙って死んでいったんだねえ。

自分が死んだあとでもいいから、

いつか気づいてねって思って黙ってたんだね。




わたしももうすぐ37だよ。


やっと、少しだけ、わかるようになったの。


黙って見ていてくれる愛情。


それがどんなに忍耐力が必要で、深い愛なのか。




わたしなんて、すぐ怒っちゃうもん。


全部口に出しちゃう、こどもにも。





うん。


ずっとね、手紙書いてみたかったの。


でも書いてはやめて。



月読は6歳だよ。天照は3歳。


うるさいの。焼きもち焼きで、お調子者で、わたしそっくりだよ。




わたしねえ、すごくいいお母さんって言われるの。


ほんとだよ。


でも、どうしてもそう思えない。


わたしは何にもできてない、だめな母親だって思う。


だって、ママみたいに愛すること、できないからね。


あんなにやさしく抱きしめてくれて、


低く甘い声で歌を歌ってくれて、


涙がでるくらい面白い物語をつくってきかせてくれて、


可愛いお洋服縫ってくれて、


手作りのクッキーをおやつに出してくれて、


どんなひとにも好かれて・・・・


いつも誰かのために尽くして裏切られる、


きれいで、チャーミングで、可愛いひと。


そんなふうにできない。



誰からも愛されなかったひと。




自分のこと、愛さなきゃ、愛されないってわかってるよね。


でもさ、いきなり自分のことなんか、好きになれないよねえ!無理だもん。そんなの。




だからね、方法があったの。


わたしね、それでね、


ゆっくり、自分のこと、認めてるところなの。



ママはもう、何かを、誰かを、信じることはできない?


もう疲れちゃった?



もしよかったらさ、


わたしのところにうまれておいでよ。


死ぬ少しまえに言ったでしょ、ママを生みなおして育てなおしたいって。


うん、赤ちゃんの恰好じゃなくてもいいんだよ。


ママの好きな形でいいの。



光でも、音でも、風でも。


海に落ちてる桜貝のかけらでも、


ビールのプルトップを開けるときの瞬間でも、


夜中にこっそり出かけていく足音でも、


なんでもいいの。






待ってるよ。


ママのこと、今度はわたしが抱きしめる。


抱きしめられないまま死んじゃうなんてやめようよ。




来てね。


ちょっと勇気がいるよ。


でも、来てね。



なつこ






























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