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それがセ*ッ*ク*スの誘いであることに気づいたのは、


彼が立ち上がって私をベッドに誘った時だった。


でも私は全然そんな気になれなかった。


どうして今ここでそんなことをしなくてはいけないのか、理解できなかった。


私は早く本に戻りたかった。


ソファーにひとりで横になって、チョコレートを食べながら、


「アンナ・カレーニナ」のページをめくりたかった。


私は食器を洗いながら、ずっとヴロンスキーという人間のあり方に


ついて考えていたのだ。


どうしてトルストイは登場人物をみんなこんなに上手く


自分の手のうちにくるんでしまえるのだろう。



・・・・ナツコさんの書いた文章ではないこと、おわかりですよね。


これです。


ねむり/村上 春樹
¥1,890
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人妻ナツコの、ろすとばあじん物語-CA3H05430001.jpg


久しぶりに、読書することで、本を読むことで呼吸する時間を過ごしました。


読んではじめて、「あ、呼吸、とまってた」と気づく本。


何が?って言われると、全編引用しなくてはならなくなります。



もともと短編集に入っていた作品。そのころからこれだけがとても好きでした。


この「ねむり」という作品だけが独立して、すこし改良されたうえで


美しい装丁、美しい挿絵と一緒に一冊の本になっています。





ふつうの主婦。感じのいい夫。可愛い息子。


でも突然それは訪れる。


眠らずに本を・・・「アンナ・カレーニナ」を読み続ける。


チョコレートを齧り、珈琲を啜りながら読み続ける。


眠らなくていい、バランスなんかとらなくていい。


そして逃げ出す。


けれどすぐに捕まってしまう。







そう、全文引用したいほどわたしとこの主婦はそっくりそのままです。


けれど、これに続くラスト、最後の最後だけが違う。



でもなにが間違っているのか、私にはわからない。


私の頭の中には、濃密な闇が詰まっている。


それはもうどこにもわたしを連れていかない。


手がぶるぶると震え続けている。





わたしには泣くことしかできない。


あとからあとから涙がこぼれてくる。


わたしはひとりで、この小さな箱に閉じ込められたままどこにもいけない。






ナツコさんは泣いたあと、本を置いて自分の足でまた歩き出します。


この主人公は旅をしていない。


わたしは箱のなかにいても、どこにだってゆける。


朝食をつくり、夫を笑顔で送り出し、子どもを抱きしめやはり笑顔で送り出し、


やるべきことを早めにすませ・・・夕飯の下ごしらえまで・・・


できる限り自分の時間をつくる。主人公と同じように。



どんなに窮屈な箱のなかでも冒険はできます。


したいと思うか、思わないか。


ほしいと言えるか、言えないか。


環境は言い訳にはなり得ない。


常に心はわたしだけのもの。



どんな人生だって不公平で、理不尽で、歩くだけで傷だらけになる。


どんな生活だって義務と責任に囲われて、笑顔は仮面のように取り外すことができる。


日常を営むからわたしの鳥は自由に飛んで行ける。


どこまででも。


行きたいと願うところに。


なりたいと思う、自分の心に。


















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